マックイーンやゴルチエら、デザイナー名をスペイン語読みしたパロディTシャツが登場

ニューヨークを拠点とするファッション・コンサルタントのガブリエル・リヴェラ=バラッツアがデザイナー名をスペイン語で表記したTシャツのコレクション「ア・ラ・メキシク」を発売した。

例えば、パロディアレキサンダー・マックイーンはアレハンドロ・マックレイナ、ジャンポール・ゴルチエはファンポール・グチエレ、イヴ・サンローランはイシドロ・サンロレンツォになる。リヴェラ=バラッツァは「このアイディアはパリにいた時に思いついた。フランス人の名前を間違って発音していて、いっそスペイン語発音にしちゃえって風にね。意外とウケるって思ったんだ」とコメント。

これらのTシャツはペルー製で、小売価格は50ドル(約5100円)で収益の一部は非営利団体のプロジェクト・パズに寄付される。ウェブサイトのスペングリッシュ・ドット・ネット(Spenglish.net)で販売中。

ファッションユーチューバーのトップげんじがトップであり続ける理由

近年、ユーチューバーの人気が盛り上がりを見せる中で、ファッション系に特化したユーチューバーが急増している。その先駆け的な存在が、げんじだ。げんじはファッションコーディネートアプリ「ウェア(WEAR)」の公式ユーザー、ウェアリスタのトップとして活動し、2016年5月にユーチューブチャンネルを開設。16~30歳に向けてファストファッションからインポート、ドメスティックブランドのアイテム紹介や、男性のNGファッションについての街頭調査などの幅広いコンテンツで視聴者を増やしてきた。現在のチャンネル登録者数は約52万人 (SNS合計フォロワーは140万人)。他のファッションユーチューバーの登録者数が10万人前後なのに対し、圧倒的な人数だ。さらに、17年に自身が手掛けるブランド「リドム(LIDNM)」をスタート。初年度の売り上げは9億円、2年目は9.5億円だという。2018年7月にはウィメンズファッション特化型のチャンネルを開設した。活躍の場を広げるげんじに、ユーチューブを始めたきっかけや動画制作に対するこだわり、今後の展望などを聞いた。

ユーチューブチャンネルを開設したきっかけは?

もともとはインフルエンス力やクリエイティブ力で生活をしていきたいと考えていました。当時は「ウェア」をきっかけに認知が広がってはいましたが、少し限界を感じていて。「ウェア」ではありがたいことに、ユーザー部門とコーディネート部門の双方で月間ランキング1位を獲得していましたが、もっと世の中に影響力を与えている人が周りにはいたし、「ウェア」だけで生活ができているわけでもなかった。もっと影響力を持つために、動画でコンテンツを配信しようと考えました。

動画の撮影や制作のノウハウはどうやって学んだ?

ファッション系に限らず、既に成功しているユーチューバーさんの動画を通して学んでいきました。たまたま動画に映っていたカメラと同じものを買ってみたこともあります。書籍なども読みましたが、実際に動画を通して学んだ方が、間違いない知識を獲得できたのかな、と思います。

ユーチューバーとして活動する際に、事務所へ所属しようとは考えなかった?

UUUM(ウーム)に所属していた時期はありました。ただ、所属時からいつかは自立したいと考えていたし、ユーチューバーという枠組みだけではなく、同時にアパレルブランドも運営する経営者としても成功したいという展望から半ば賭けで自立しました。笑

ファッションユーチューバーとしての活動はかなり早かった印象だが、動画のネタ決めなどで苦労したことはある?

大変でしたね。いかんせん前例がなく、ゼロから作ることがほとんどだったので。初期の頃は「バク転してみた」とか「女装してみた」という動画を配信していたんですが、コレじゃない感が凄かったです(笑)。ネタは動画のコメント欄を見て考えるなど、視聴者の方々と一緒に動画を作り上げてきたイメージですね。

「ウェア」とユーチューブで、扱うブランドには違いがある?

少し変えています。ファッションの入り口としてのユーチューブ、もっと深く知りたい人が「ウェア」やインスタグラム、といった流れが作れればいいなと思っています。理想としては、「げんじのSNSを見れば欲しい情報が何でもある」と言われるようになりたいです。「ジーユー(GU)」や「ユニクロ(UNIQLO)」もあれば、ドメスティック、インポートブランド、セレクトショップのオリジナルも扱っている形を目指しています。

動画を制作する際のこだわりは?

大体10分程度で、視聴者の方が飽き過ぎず、なおかつ知りたいことは全て知られるような動画作りを心掛けています。動画の構成も大切ですね。例えば黒のテーラードジャケットを紹介するときに、いきなりアイテムを紹介しても、興味がない人は離脱してしまう。まず、「コーチジャケットやMA-1が流行っているけど、カジュアルやストリートだけしか味わえない。たまにはかっちりするのも良いのでは?」と問いかけ、興味を喚起する。そのうえでテーラードジャケットを取り出し、アイテムのポイントや僕がこのアイテムを選んだ理由、どこで購入できるかを伝える。そういった流れを作る上でも、10分程度の時間が必要なんです。

動画の制作時間はどの程度かかっている?

撮影は1時間~1時間半、編集は6時間以上かけています。先日も朝の9時に撮影を開始して、21時半になんとか動画をアップできました。最近はウィメンズチャンネルもスタートし、メンズは週7本、ウィメンズで週3本程度と、合計で週10本ほど動画を挙げています。チームで作るなど、協力し合わないと難しく、普段は僕以外にも動画編集の人など6人体制で制作しています。

ウィメンズチャンネルをスタートした理由は?

もともと僕が動画を配信しているのは、見た人が自信を持ち、人生を変えられればという思いからです。今までは主に男性に向けコンテンツを発信していましたが、女性からもモテたい、結婚したい、周囲の目が気になるなどの声があったんです。個人的にはウィメンズファッションも好きだし、「ウェア」などでの知見から論理的にファッションを語れることもあり、始めてみました。

とはいえ、ウィメンズでは分からないことも多かったかと思うが?

確かに、分かることもあるけど、分からないこともあります。ただ、分からないことは日々動画を作り続ける中で勉強と分析を重ねています。あとは自分の中で当たり前だと思っていたことでも、ちゃんとコンテンツとして配信する。例えば僕を含め男性って女性の鎖骨が見えるのが好きな人が多いと思いますが、それを口では言わない人が多い。でも僕がそれを動画で配信したところ、「男性って鎖骨が好きなんだ」と反響が良かったです。

ユーチューバーとしての収入はどの程度ある?

ユーチューブ側の規定もあり、具体的な金額はお話できませんが、僕は比較的早くてユーチューバーとして活動を始めてから3カ月ほどで一人暮らしで生活できるほどになりました。ただ、ファッションユーチューバーが全然いなかった昔と今では状況がかなり違うので、参考にはならないかもしれません。

現在は主にユーチューブで収入を得ている?

そうですね。「リドム」や他の企業との取引なども行っていますが、全てユーチューブがあったからこそ成立していると考えています。

チャンネル登録者数が急に増えたタイミングなどはある?

他の動画の関連動画として紹介されたり、他のユーチューバーさんとのコラボ動画などで一気に増えたタイミングがありました。一番伸びた時で、3カ月で7万人ほど増えたこともありました。ネタとしては「ジーユー」や「ユニクロ」も鉄板ですが、コラボ動画も強い。また、ファッションに関係のない動画もときどき差し込むと反響があります。身長を伸ばす方法、とかを配信した時もありました(笑)。

自身のブランド「リドム」はどういった経緯で始めた?

動画以外に違った発信ができないかと思い始めました。スタート段階では僕とデザイナーさんとの間の意思疎通が不十分で、デザインの盗用疑惑が出て多くの方にご迷惑をおかけし、謝罪動画を出すなどの反省点もありましたが、ファストファッションでは手に入らないようなデザインで、日本製の高品質なアイテムを比較的安価な価格で販売していければと思っています。

「リドム」の販促としても、ユーチューブは有効?

「リドム」に限らず、強力な販促ツールだし、ユーチューバーは最強の販売員になりえると思います。店舗での接客だと1対1になりますが、ネット上では1対10万などが可能になるので。「リドム」に関して言うと、シーズン問わず、さまざまなコーディネートができるスキニーが動画で紹介し良さが伝わったことで累計7万本、ライダースも3万着売れています。

今後の展望は?

僕個人のチャンネルでは、スニーカー専門の方やドメスティックブランド専門の方など、もっといろいろな人をゲストとして巻き込んで動画の幅を広げていきたいですね。より大きなスケールだと、先日動画でも発表しましたが、若手ユーチューバーの育成や、ユーチューブを始めたいと考えている企業のサポートなどを通じて、第二のトップファッションユーチューバーを育てていくつもりです。仮に自分の首を絞めることになったとしても、僕じゃないとできないことだし、僕と同じ志を持つ人が増えてくれたらうれしい。さらには、もっとアパレル企業の方々にファッションユーチューバーの存在を広めていきたいですね。

「クロエ」がパリ以外で初のランウエイショー 6月に上海で

クロエ(CHLOE)」は2020年プレ・スプリング・コレクションのランウエイショーを6月5日に上海で開催する。「クロエ」がパリ以外の都市でランウエイショーを開催するのは1952年の創業以来これが初めて。また、プレ・コレクションをランウエイショー形式で発表するのもブランドとして初めてになる。

ジェフロワ・ドゥ・ラ・ブルドネイ(Geoffroy de la Bourdonnaye)=クロエ最高経営責任者(CEO)は同イベントは現時点では1度きりとしつつ、「プレ・コレクションをショーで見せる戦略というより、中国のクロエガールズたちのために中国で何かをしたかった」と語る。ナターシャ・ラムゼイ・レヴィ(Natacha Ramsay-Levi)=クリエイティブ・ディレクターは1月に上海を訪れてインスピレーション源を探したほか、100%中国人で構成されているという中国の現地法人とアイデアを練ったという。

上海でランウエイショーといえば、昨年11月に「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」が中国で炎上し、上海で予定していたショーが開催数時間前にキャンセルされた例があるが、ドゥ・ラ・ブルドネイCEOは、「私はウォルト・ディズニー(WALT DISNEY)やペプシ(PEPSI)といった大企業で働いてきて、ある地域でパワーを持つには、何をするにも各地域の文化のアイデンティティーを考慮に入れることがグローバルブランドの基礎となることを学んだ。本国から来た人材だけでは、トップダウンのコミュニケーションになってしまう。一方でその地域や文化に根差した人々がいれば、相互のコミュニケーションができる」と話す。

さらにドゥ・ラ・ブルドネイCEOは、中国の消費者が「クロエ」の売上高の非常に重要な部分を担っているとし、「中国は他の地域よりも速いスピードで拡大している。その第1の理由は、われわれは中国で過小評価されていたため、第2に、中国政府が国民に外国で消費するのではなく中国国内で消費することを奨励しているためだ。中国の旧正月の期間中、中国語圏以外のインバウンド消費とは対照的に中国語圏で中国人の消費が増加した」と明かす。

中国で17店舗を構える「クロエ」は、3月29日に北京のチャイナ ワールド モール(CHINA WORLD MALL)の店舗をリニュアルオープンし、上海のIFCモールにも新店をオープンしたほか、西安のSKP百貨店にも昨年6月に出店している。今後の出店計画についてドゥ・ラ・ブルドネイCEOは、「現在中国の第1級、第2級の都市の9割に出店しているが、中国市場の成長に合わせてわれわれのネットワークも拡大していくつもりだ」としている。

“今はエレガントがタブー。だから再解釈した” 「バレンシアガ」のデムナがテーラードに力を入れた理由

バレンシアガ(BALENCIAGA)」がまた時代の一歩先を行った。自身がリードしてきたストリートスタイルから一足抜け出し、エレガントやグラマーなスタイルに力を入れている。

前半は、先シーズン発表した“3Dテーラリング”のシリーズで、モデルの体を3Dスキャンしたデータを基に型を作り、圧着して成型。80年代調のパワーショルダーのコートドレスやスーツの生地はデニム、レザー、ピンストライプのウール、フェイクファーとバリエーションが増えている。

アーティスティック・ディレクターのデムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)は「バレンシアガ」でデビューして以来、オートクチュールメゾンとしてのDNAを引き継ぎ発展させてきたが、今季はさらにその意識が高い。体から浮かび上がる筒状のキャミソールドレスは、生地の上辺とストラップにボーンを使用している。これは体と布の間の空間を大切にしていた創業デザイナー、クリストバル・バレンシアガ(Cristobal Balanciaga)のポリシーを現代流に再解釈したもの。横から見るとアルファベットの“C”に見えることから名づけられたシルエット“Cカーブ”は、シルクのシャツとデニムのキックスカートなどに取り入れられている。

特筆すべきは若い世代を意識したジャケットやセットアップの強化だ。ショーの後デムナはテーラリングについて、「『バレンシアガ』の顧客は若い世代が多い。テーラリングを普段は着ない彼らに着てもらうためにジョギングスーツのような素材を使ったり、シャツを必要としないジャケットを用意したりした」と話している。ジャケットは確かに触るとジャージーのように柔らかく、肩パッドが入っていないからカーディガン感覚で着ることができる。「最近は、エレガンスやグラマーがタブーのような感じだけれど、自分なりに現代に合うように再解釈してアクセシブルにした」と語っている。

圧巻の会場演出は、デムナがアートバーゼルで出会ったカナダ人ビジュアル・アーティスト、ジョン・ラフマン(Jon Rafman)との協業で実現した。「電脳の中にいるかのような体験ができる空間を作りたかった」とデムナが話す演出は、ガランとした空間にLEDパネルのトンネルを作り、床も壁も天井も映像ですっぽりと覆った。ショーが始まる前は水滴と水の波紋の映像が流れてまるで水の中にいるような感覚となり、ショーが始まるとコンピューター回線の中に吸い込まれたような映像がダイナミックに、そして滑らかに流れ続けた。発表した服が映像とすべてリンクしているわけではないが、今、時代の一歩先を行く「バレンシアガ」らしい世界だ。